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今日は『ローカライズの品質をあげるポイント』についてお話していきたいと思います。「ローカライズの品質をどうやってあげますか?」という質問に対し、基本的にみなさん「良い翻訳者を使う」など答えがちですが、これだと結局1人の翻訳者の技量にすべてを委ねることになってしまうので、あまり良い答えだとは言えません。

また、翻訳者を抱えているゲーム会社が少ないので、良い翻訳者を確保するとしても、外のローカライズ会社を使うことになります。

その際、どの会社も「うちは品質がいいです」と営業してくるのは当たり前のことで、その言葉を鵜呑みに信じるよりは、しっかりと自分で判断できる考え方を持った上で、ローカライズに向き合うべきだと言えます。

◆ どのようにローカライズの品質をあげるのか
 1 : ファミリアライズ・翻訳・LQA、この3つのバランスが大事
 2 : 3つの中でも最も重要なのは、意外とLQA
◆ ファミリアライズ
◆ 翻訳
◆ LQA
◆ まとめ

 

◆ どうやってローカライズの品質をあげるのか 

では、どうやって品質をあげるのか。今回は結論から述べていきます。簡単に言うと、ローカライズの品質をあげるポイントは2つあります。

ポイント1 : ファミリアライズ・翻訳・LQA、この3つのバランスが大事

 ポイント2 : 3つの中でももっとも重要なのは、意外とLQA

少し細かく見ていきましょう。

1:ファミリアライズ・翻訳・LQA、この3つのバランスを良くすること。

例えば、この3つの中で翻訳だけに力を入れ、ファミリアライズとLQAをおろそかにすると良いローカライズはできません。(例えば、三島由紀夫なみの文才をもった翻訳者に翻訳をお願いしたとしても・・・LQAをきっちりやらないと、ゲームを世に送ってはならない)。

例えば、『やろう!』と言う日本語を英訳するとなると、それは『やりましょう!』と言う意味をしているのか、『やってください〜』、なのか、『野郎〜』なのか・・・殆どの翻訳者は、はちゃめちゃにファイルを渡されて、杜撰な状況で翻訳作業に挑むものです。だから、ファミリアライズとLQAは重要です。

ただし、3つすべてに力をいれる余裕のない会社は、上記3つのうちに、1つがダメでも後りの2つがしっかりしていたら、なんとかなるものです。例えば、翻訳とLQAをしっかりすれば、ファミリアライズを少し手を抜いても、問題はありません。しかし、3つのうち2つがダメな場合、どうあがいても品質の担保ができません。これを1つご理解いただきたいと思います。

2:LQAをきっちりおこなうこと

さらにもう1つ理解しておくべき点は、最終的に『ファミリアライズ』『翻訳』『LQA』の中で一番大切なのは、意外と『LQA』だということです。

この2点をまず頭にいれていただきたいと思います。

ローカライズの品質をあげる2つのポイントが見えてきたところで、次にファミリアライズ・翻訳・LQAのそれぞれについて、さらに細かく見ていきたいと思います。

*補足ですが、一番ベストなのは、開発機能を持ち、さらにローカライズと同時進行でゲームにローカライズしたテキストを組み込むことですが、今回はそれができないという条件を想定して、記事を書いています。

今回の内容はすべて、社内でローカライズを行うのではなく、『ローカライズを外注する際の、品質を上げるポイント』なので、社内でローカライズができるのであれば、少し事情が異なってきますので、前回の記事を参考にしていただければと思います。

関連記事 : 【ゲーム】ローカライズすべき言語【ランキング    ・    ローカライズ会社を見極める【5つのポイント

◆ ファミリアライズ

では、まずファミリアライズ。ファミリアライズは、みなさんが一番怠りやすい分野だと思いますが、それは大きな間違いです。

ファミリアライズというのは、翻訳者がゲームを遊ぶ(翻訳する前にゲームをプレイする)期間を言いますが、この期間を設けることによって、翻訳作業がかなり速やかになります。また翻訳というものに『色気』が出てきます。

この『翻訳の色気』というのは、LQAの時点で修正できるものではありません。ファミリアライズという初めの段階で味を出していかないと『面白く無い単純な翻訳』に仕上がってしまいます。

ちなみにファミリアライズというのは、例えばストーリーのあるゲームの場合、最後までファミリアライズをさせないといけません。多くの会社は2〜3日程度しかこの期間を設けませんが、何十時間のあるゲームだとしても、最後までそれをやらないと、どんなエンディングかももちろんわかりませんし、味のあるローカライズはできません。

例えば「小説を翻訳しろ」と言われたら、まずその小説を2〜3日かけて読みますよね。映画の字幕なんて制作する前も、映画をぐらいの準備はしますよね。ゲームも一緒のはずです。

しかし、やはりゲームは時間がかかるため、またパブリッシャーの多くはファミリアライズにお金を払いたくないため、結局ゲームをろくに遊んでないのに翻訳をし始めるケースが多いです。

これは、非常識な話ですが、この非常識はローカライズ現場での常識になってしまっています。でも、ファミリアライズは本来、『やった方が良いこと』ではなく『やらなければいけないこと』です。

特にRPGなどのストーリーの重たいゲームの場合、また謎解きゲームなどのジャンルでは、最後までゲームを遊ばせた方がいいです。

◆ 翻訳

一般的にはファミリアライズをした人に翻訳してもらいます。

日本語から翻訳する場合、ペースとしてはだいたい1日あたり3500文字(だいたい8時間ほど)が限度だと思ったほうが安全です。

1日3500文字だとすると、100万文字の翻訳ならば約286日とかかり過ぎてしまうため、翻訳者を増やすというのが主な対策ですが、翻訳者を増やしたとしても統一性を保つため、せいぜい3人までにした方が良いです。

弊社の場合は、時にMMRPGなどの大型ゲームでは10人ほどの翻訳者を同時進行させたこともありましたが、後々統一性を保つのがとても大変という結果になりました。ここは、注意するべき点です。

◆ LQA

LQAは、テキストのはみ出しがないかどうか、キャラクター名などメニューなどで大きい問題が無いかどうかなどを確認する作業です。

LQAは良い品質を守る最後の砦なので、必ず行わなければなりません。おすすめのソフトなどについては、企業秘密とさせてください。

◆ まとめ

ここまでに3つの作業の基本的な部分を話してきましたが、結局多くの会社は『翻訳』は大切にしますが、ファミリアライズとLQAなどを確認した上で『これくらいでいいか』となってしまいがちです。ただ、やはりちゃんとした作品を世に送りたければ、バランスを大切にする必要があります。

たとえば、冒頭で述べたようにファミリアライズをちゃんとしなかったとしても、翻訳とLQAを徹底的にやればなんとかなります。

ファミリアライズと翻訳をちゃんとすれば、ある程度LQAを抜いてもはなんとかなったりします。なぜなら、翻訳の基礎レベルが高いはずだからです。でもベストは(2つめのポイントになりますが)、LQAを徹底してやること。

最後に、LQAについて重要な注意点があります。

LQAにおいて、主観的な要因を無くすことは、重要です。LQAの担当者も人間ですので「私はこのスタイルが好きではないので、口調を変えます」などと言い出したりします。でも、スタイルを決めるのは翻訳者であるべきです。理由は、ときかれると、色々あります。1つだけ書くと、『LQAはスタイルをイジるタイミングではない』。そこで、事故を避けるために、LQAに基づいたファイルの編集は、翻訳者にさせることが重要です。LQA担当は、最初の指摘と、リグレッションを行えば結構です。

これが品質を担保するためのキーポイントになってくると思います。

なので、ローカライズの品質というのは、『1人の良い翻訳者を使った = 品質が良い』というのが存在しないということを、理解していただきたいと思います。

大事なのは、ファミリアライズと、翻訳と、LQAのバランスを持つこと。1つだけ徹底的にやったとしても意味がないので、3つとも程よくやることが一番大事です。

これは当たり前かもしれませんが、例えば先日PS4であるタイトルをプレイしていて

「Miss, 〇〇」

というキャラクターが出て(名前はあえて言いませんが)この、『Miss』が失敗の『ミス』として訳されていました。

これは、東証一部に上場している日本のゲームパブリッシャーが発売しているゲームです。

このような、激烈にお恥ずかしい間違いは、LQAを1つやっていれば、直せたはずです。当たり前のことかもしれませんが、この当たり前のことを、きっちりと進行されていないというのが今の日本の海外向けローカライズなので、この記事を書くことにしました。

ちなみに、弊社はインディーゲームの配信ブランド『PLAYISM』というものを持っていますが、ここがローカライズのコストを気にせずに、3つとも徹底的におこなっています。

手前味噌ですが、例えばハードルの高いナイト・イン・ザ・ウッズなどの日本語向けローカライズは、翻訳だけではなく、ファミリアライズもLQAも徹底的に行ったことによって、品質をあげることができました。

ぜひみなさんも、良い形で海外にゲームを届ける努力をして、日本のゲームのレベルの高さで世界を圧倒させよう。

 

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